筏(いかだ)

2023年01月13日

1月12日のミーティング後半で、仲間が、別の自助会で「筏(いかだ)」をテーマにした

分かち合いが行われていたと話してくれました。

 その自助会で具体的にどんな内容が分かち合われたのかは定かではありませんが、確か

ひとつの筏に沢山の人が乗ると沈没してしまう。だから筏は分散していた方がいいのような例えで

自助会でも小さなグループに分散していた方がリスクが少ないといった内容のようでした。

 いやいや、一人で回復するのは難しいから、手を取り合って筏を組むことが大切だってことの

ようです。

 このお話を聞いて、私たち当事者研究会では、勝手に話を飛躍させなぜか映画「タイタニック」を連想して、乗っかり話に発展しました。

 タイタニック号が沈没する際、海に投げ出され板きれに掴まっていたローズとジャック。

ジャックはローズを助けるために、自分から海に沈んでしまいます。

他者の命を助けるために自己を犠牲にするというのは美談ではあるのだけれど、共に助かる方法は

なかったものか??

 そんな話をすると、別の仲間が、ローズとジャックが変わりばんこに海につかっていたら二人とも

助かっていたかもなどのアイディアを出してくれました。


 この話から、私は、海外におけるアルコール依存症者のグループ療法のエピソードを思い出しましたので

この場を借りて記録しておきます。

(アドベンチャーグループカウンセリングの実践)

「薬物やアルコールを断つことができたと思ったら、今度はそれまで隠されてきた深刻な心理的問題が表面化することが多い」。そうなるとクライアントはさらに長期の心理療法を受けなければならない。

アクティビティ・セラピストのS.ゴロドナーは、「依存症者の会」(アルコールと薬物中毒)を通して、健全なグループ文化を確立する必要があると主張し、「Acid River」(切り株から切り株へと板を渡しながらグループで移動する)というアクティビティーをよく使う。

 ブリーフィングではグループにこう伝える。

『もし落ちそうになっても誰かにつかまってはいけない。相手も落ちてしまうからね』。

 すると、女性の一人はこれを『助けを求めてはいけない』と受け取った。

それに対してグループの反応はこうだった。『板の上から落ちそうになったとき、体のコントロールを完全に失っていたら、助けを求めてはいけない。しかしちょっと危ないと感じたときは、コントロールを失う前に急いで助けを求めるべきだ』

 ここにはアルコール依存症者に特有の問題点が表れている。彼らは誰も自分を助けてくれないと思っている。自分が酔ってコントロールを失っていたり、倒れてしまった時などは特にそうである。

 そこで彼らはまだ酔っていないうちに助けを求める傾向がある。ある意味で依存症患者はいつも助けを手に入れているといってもよい。このような「ずるさ」を理解するとその失敗は十分予想できる。

クライアント自身がそう仕向けている可能性がある。(※にこっと注:イネーブリングに甘えて、底付きを体験していないってこと)

 ゴロドナーは、次の「Acid River」の例が中毒患者のライフスタイルをよく表しているという。

 グループには10人いたが、最後まで行けたのは3人だけだった。私は中毒から回復する確率はちょうどこれと同じだとグループに告げた。つまり川の向こう岸まで到達すれば中毒から解放される。ある時、活動を始めて40分たったところで一時中断したことがある。2人を除いて、全員が地面に落ちてしまっていた。しかもその2人もかろうじて岩にしがみついているだけだった。2人はこれは失敗だと言った。しかし私はこれを訂正した。『君たちは十分安全な場所にいる。しかしこれから先うまくいくかどうかはわからない。実際、この2人がいる地点は通過点にすぎない。川を渡りきれるかどうかまだわからないのである。結局クライアントにできるのは、その時その時、一番安全な場所に居るよう努力することしかない」

 ゴロドナーはさらにハイエレメントについても述べている。彼はその中で、助けを受けながらもできるだけ自力で活動することが大切だと強調している。

 そのクライアントは「倒木のぼり(Inclined Log)]でほとんど最後の、一番高い所にいた。彼はワイヤーに向かってあと一歩踏み出すことができずにいた。でも私たちは助けなかった。

 回復の最後の一歩を踏み出す用意ができていない状態を象徴していると考えたからである。このクライアントはいつもグループの団結を協調していた。そのせいか私たちがプレッシャーをかけると、彼は怒り出した。人のせいにするのが彼の癖だったのである。だが私たちは譲らなかった。『君はまだ最後までいってない』。(※にこっと注:最後とは、自分で自分自身のことをなんとかしようとすること)

 このケースのように、比較的高い能力を示すクライアントにはプレッシャーをかけることがある。もちろんそれが失敗につながることもある。失敗したところで彼らと話し合い、もう一度同じ活動をやってみる。



 さて、このようなエピソードを記録させてもらったが

依存症になるには、安心して信頼できる人に頼ることができない人が、自分の苦しさを何とかしたくて

アルコールなどの助けを借りるからだという説があります。

 ですので、依存症予防にしても依存症からの回復にしても、上手に他人に助けを求めることができるようになっていることが大切だと考えています。


AC当事者研究会 (事務局:世界聴き方研究会)
ミーティング会場:ふくふくプラザ
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